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Architectural Survey

建築測量について

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01建築測量とは

設計図の情報を、実寸で現地に精密に具現化する仕事です。

建設工事では様々な職種の人たちが関わります。
その多くの人たちは、設計図をもとに作業をしますが、現地に図面と同じ情報がなければ工事を進めることはできません。
そのため、建物を建てる場所には、図面通りの正確な位置情報が必要となります。
建築測量では、これらの情報を現地に表現するために、測量技術を応用して図面通りの位置出しを精密に行います。

位置出しの際には、「墨つぼ」と呼ばれる道具を使って、実際に墨で線を描くことから、その作業は「墨出し」と呼ばれ、
さまざまなノウハウや、熟練した技術が必要とされる一方で、近年では最新の測量機器とBIMデータなどを連携した新しい精度管理など、
ICT を駆使した DX 化も進んでいます。

伝統的な道具を使用して行うアナログな技術と、最新の測量機器を使って行うデジタル技術が融合した専門的な職種で、
厳しい精度管理が求められる現代の建設現場では必要不可欠な存在となっています。

02建築測量の歴史

建築測量で行う主な作業の一つ「墨出し」は、
紀元前3000年頃の古代エジプトで既に行われていたとされています。

建築測量で行う主な作業の一つ「墨出し」は、
紀元前3000年頃の古代エジプトで既に行われていたとされています。
日本では飛鳥時代に建設された世界最古の木造建築とされる、
法隆寺に墨出しの痕跡が発見されています。

それから時代は流れ、近代建築の複雑化が進み、
1960 年代に専門工事として「墨出し工」が確立されました。

そして、2021年10月には、
国土交通省が定める登録基幹技能者制度に、「登録建築測量基幹技能者」として認定を受け、
翌年、2022年3月には(一社)全国建築測量協会主催の「第一回建築測量技能者試験」が開催されました。

さらに、同年2022年6月には、(一財)建設業振興基金が推進する建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価基準に
「建築測量工」として登録されたことで、公的に建築測量という職種が確立されました。

現在でも現場では「墨出し屋」や、「墨出し大工」という愛称で呼ばれ、建設工事における重要な役割を担っています。

建築測量の歴史

03建築測量の仕事内容

建物が建つ前から、建ったあとまで、すべての工事に携わります。

  • 準備工事

    計画地の現況測量を実施し、敷地境界から追い出して平面的な建物の配置を決め、高さの設定を行います。基礎杭や山留杭などの位置出しも行うため、非常に重要な工事が多くあり、ミスの許されない工程です。

    準備工事
  • 基礎躯体工事

    文字通り、建物の基礎部分を構築する工程です。基本的にはここで初めて建物が物理的な形を成していきます。地震大国である日本においてはとても重要な部分であり、慎重かつ精密な施工が求められます。

    基礎躯体工事
  • 地上躯体工事

    ここまでくると、いよいよ地上部分の工事が始まります。地上躯体工事では、下階の基準墨を上階に垂直に追い上げますが、高層になればなるほど精度管理が難しくなるため、熟達した技術が求められます。

    地上躯体工事
  • 鉄骨工事

    鉄骨柱の精度管理では、柱の倒れの管理許容差は1/1,000とされています。これは、20メーターの高さで2センチの誤差までしか許されないということを意味しています。この精度を確保して施工するためには、様々な調整方法を瞬時に判断して、他関係者と連携し、円滑に工事を進めることが要求されます。また、高所作業などの危険作業が発生することもあり、安全面でも徹底した管理が要求されます。

    鉄骨工事
  • PC(プレキャストコンクリート)工事

    PCとは、プレキャストコンクリートの略で、柱・梁・壁などの部材を、あらかじめ工場で製作するコンクリート製品です。このPC部材の取付では、精度管理のみならず、仕上がった部材面の連続性など、意匠的な見え方にも配慮する気遣いが求められます。

    PC(プレキャストコンクリート)工事
  • 仕上工事

    ここでは、屋内外のあらゆるものの仕上の墨出しを行います。間仕切り壁の墨出しや、建具設置用の基準墨出しから、コンクリートの斫り墨や外壁取付け用の墨出しなど、作業内容は多岐にわたります。すべての作業で、部材の最終的なおさまりを理解し、墨を使用する他職の施工状況をイメージできなければ、よい仕事はできません。

    仕上工事
  • 外構工事

    建物の外でも位置情報が必要なものはたくさんあります。駐車場や、付属施設をはじめ、敷地境界が隣接した擁壁など、建物の配置と整合性を確認しながら位置出しを行います。

    外構工事
  • 完了検査立ち会い

    建物が完成した後も我々の仕事は終わりません。設計図類通りに建物が出来上がっているかを、監理者立会いのもと検査します。

    完了検査立ち会い

04将来性と多様性

2021年10月、国土交通省において「登録建築測量基幹技能者」が認定され、翌年2022年6月には建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価に新たに「建築測量工」として能力評価基準が新設されました。

このように、公的に明確なキャリアパスが出来上がり、それに沿ってスキルアップすることで、客観的に適正な評価を受けることが可能となり、将来性が担保されました。

また、我々が施工する基準墨などは、多くの専門工事会社が使用するため、建築測量の作業内容はバラエティに富んでいます。
そのため、各工程で自分のスキルに合った作業を見つけやすい点や、力仕事がないことで、性別を問わない職種という点で、多様性豊かな仕事であると言えるでしょう。

建設キャリアアップシステム(CCUS)

05建築測量の必要性

地震大国「日本」

我が国は4つのプレートの上に位置しているため、頻繁に地震が起きることでも有名な国です。
震度1~2の地震は毎日のように発生しており、地震の少ない国と比較すると、建築物への地震対策が厳重に管理されています。

その一つが精度管理です。日本で建物を建築する場合、「建築工事標準仕様書」というものに基づいて施工管理がされますが、
その中の記述に鉄骨造の建物の倒れについての管理許容差というものが記載されています。 そこには「e≦H/4000+7mm かつ≦30mm」と記載されており、
これを30階建てのマンションに置き換えると、1階から屋上まで30mmの倒れしか許されないということになります。
一般の方からすると、非現実的な数字に見えるかもしれませんが、我々、建築測量工は常にこの基準を守って精度管理を行っています。

昨今の建設現場ではデジタル化のスピードはめまぐるしく、
建設ロボットやAIなどが活躍していますが、精度管理の分野ではまだまだ技術的に超えられない壁があり、
この厳しい建築基準を満たすためには、高性能な測量器械と人の手が必要不可欠となっています。

このように建築測量工は、古くから伝承される技と、最新のテクノロジーを駆使して高い精度管理を行っています。
今後の建設業においても、なくてはならない存在として、活躍し続けることでしょう。